皆さんこんにちは!カネパッケージの鈴木です。
各国の政府や企業が取り組みを進める「脱プラスチック」化。
アメリカやEU諸国をはじめ、近年では新興国でも様々な規制が始まっています。
世界では、2040年までに世界全体のプラスチック汚染を解決するために、国際プラスチック条約(The Global Plastics Treaty)の締結が進められています。
これは、国連環境総会(UNEA-5.2)において採択された歴史的な決議で、プラスチックの設計、生産やリサイクル、廃棄方法を見直し、循環型経済(サーキュラーエコノミー)を推進することが掲げられています。
https://www.unep.org/inc-plastic-pollution
そんなますます重要視されるプラスチック問題ですが、本日は、カネパ設計チームが取り組んだ脱プラ事例をご紹介します。クライアントは大手サッシメーカー様。梱包の見直しで、29トンのCO2削減に成功しました。
大手窓サッシメーカーの事例
お客様は大手の窓サッシメーカー。
サッシは使用するときには枠状ですが、梱包時はこのように束ねられています。
従来の梱包は、このように紙(片段)を挟み込み、プラスチックラップでグルグル巻きにした状態。
工数もかからないし、何よりも安い。しかしお客様は不満を抱えておられました。
【お客様が抱えていた課題】
- このプラスチックは、いったいどれほど環境に負荷をかけているのか?
- プラスチックをゼロにできないか?
そこで当社は、お使いのラップの量を確認し、それがどれほどのCO2を出しているのか確認しました。
驚くべきCO2削減効果
お使いのプラスチックは、ラップ、テープ、フォーム。
原料は、ポリプロプレンとポリエチレンでした。
化学構造と、原子量は上記のとおり。
炭素の重量をPE、PPそれぞれ換算すると、総重量の85.71%という計算になります。
お客様の「1箱当たりのプラスチック使用量」と「年間の製品生産数」から算出すると、
年間のCO2削減総量は、29トン。
これはスギの木でいうと、杉の木2,082本分の年間CO2吸収量に匹敵します!
これは東京ドーム約一つ分の面積に植わっているのと同等量の杉の木の本数です。
森一つが1年かけて吸収しなければいけないなんて、すごい量ですよね。
考案したHクッション
安くて便利なプラスチックに対抗し、段ボールのみの緩衝材で置き換えることは、かなり高度な設計が求められました。
従来の梱包はラップゆえかさばらず、外箱のサイズも可能な限り最小化されていました。
外箱の大きさを変えることは、輸出時の積載効率に悪影響を与えてしまいますので、絶対にNG。
プラスチックラップは製品全体をうまくホールドしていたので、これと同じレベルの緩衝材を開発することが条件でした。
試行錯誤を重ね、10点以上にも及ぶプロトタイプを経て、カネパタイが考案したのが
Hクッション
でした。
Hクッションはその名のとおり“H”型をしており、梱包時に製品の両端を挟み込みます。
隙間にサッシ製品の凹凸をうまく差し込むことで、全体がうまく支えられる構造です。
可能な限りの省スペースを実現した結果、外箱は従来通りのサイズを維持することができました。
4辺からなるサッシはたくさんの凹凸があります。向きを最適化し、緩衝性と省スペースを同時に実現。
また、この製品のすごいところは。10種類以上あるサッシ製品すべてに利用が可能なこと。
共通部品化させる工夫も凝らしたことで、お客様が管理する手間をぐっと軽減しました。
組み立てた際の動画はこちらです。
いくら素晴らしい設計でも、お客様が現場で組み立てやすくなければ、意味がありません。
可能な限り無駄を省き、だれでも簡単に作業できる構造にしました。
お客様の声
本製品を導入いただいたお客様より、嬉しいお言葉をいただきましたので、ご紹介いたします。
弊社では事業活動を通じてさまざまな社会問題の解決を図り、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献することを目指しています。特に弊社が属する建材業界においては「エンボディード・カーボン*」が「オペレーショナル・カーボン」と等しく最優先取り組み事項とされており、弊社でも様々な製品で循環型素材を採用することで、製造時のCO2排出量削減を図っております。
弊社のタイ工場では日本向けのサッシ製品が主要な生産品となっており、それらの梱包資材としてはストレッチフィルムが広く採用されておりました。
ストレッチフィルム梱包
ストレッチフィルムはコストと利便性の観点から非常に優秀な素材であり、正しく回収とリサイクルがなされれば環境にも優しい梱包資材ですが、現時点ではその多くが廃棄・焼却処分されてしまっているのが実情です。そこで今回 梱包資材の脱プラ化を目標にカネパッケージタイランド様とタイ現地で協働検討をさせていただきました。
協働検討にあたっては、サッシ製品独自の品質基準や輸出に伴うコンテナ輸送試験、また組立と梱包時における生産性など、弊社側からの様々な要求をカネパッケージ様に1つ1つご理解いただき、1年以上をかけて要件をクリアいただきました。
単純な比較ではストレッチフィルム梱包に対しコストアップとなるものの、当初の目標である脱プラ化の達成や、お客様での開梱作業の効率化(ストレッチフィルム梱包ではハサミやカッターを使用する必要があるのに対し、H型クッションでは取り外すだけで開梱可能)によりサプライチェーン全体で捉えれば非常に有意義な改善であったと考えています。
引き続きカネパッケージ様とは本テーマの横展開を含めて梱包資材の改善や環境貢献活動に向けて協働させていただければと考えております。本当にありがとうございました。
※エンボディード・カーボン:製品使用時の CO2排出量(オペレーショナル・カーボン)に対し、建設時(原材料調達・加工・輸送など)にかかるCO2排出量のこと
このように、今まで当たり前のように使っていたプラスチック梱包も、長期間の破棄量を調べてみると、もしかしたら思わぬ環境負荷につながっているかもしれません。
従来の梱包を見直すことで、プラスチックはいくらでも減らすことがきます。
もし少しでもご興味があれば、ぜひお気軽に弊社にお問い合わせください!